不動産鑑定士試験の備忘録

結果として独学・兼業で臨むこととなった不動産鑑定士試験の備忘録

7.参考書籍等の具体的な活用方法/(6)会計学

概要

 

会計学に対しては苦手意識があった(かつて、それなりに勉強したにもかかわらず簿記3級に落ちたくらい)。よって、基本(社会人としての教養レベル)から学ぶこととし、新書を活用した。

 

また、高坂講師のガイダンス動画の説明に基づき、学説には深入りせず、基準を覚えることに特化した。

さらに、難易度・問題の質の乖離が著しい等の理由により、この科目については問題演習としては過去問を活用しなかった。もっとも、過去問を用いての出題分野の傾向については他の科目よりも重点的に分析を行い、出なさそうな分野の峻別を早期に行った。(税効果会計 等)

 

1)全体像の把握
桜井入門書を繰り返し読んだ。(2019.9~10)。桜井氏の入門書は、のちに活用した財務講義の理解にも繋がった(同じ著者であるため、ワーディングや体系整理が共通しているからである)。また、簿記の基礎知識についても平易な入門書で復習した(2019.9)

TACの簿記テキスト(2級3級)も辞書的に活用した。

2)論点集の暗記
TAC税理士論点集の理解と暗記を行った(2019.12~2020.10)。
タイトルからは想像できないが、この本は論点集+αである。ナンバリングされているが、これだけ買っても十分活用可能。総則、資産、負債、純資産、構造の分野別から頻出論点を99個抽出し、一問一答形式でコンパクトにまとめられており、重要箇所はより詳細な解説を加えるという理想の参考書(付録に会計基準がついており、これも大変参考になる)なのだが、タイトルで損をしている。会計学においてはこれを基幹教材のひとつとした。

 

もっとも、コンパクトにまとまりすぎてわからないので、うまくほぐす必要がある。そのためにTACみん欲し税理士シリーズ及び財務会計講義を辞書的に活用した。

3)習得知識の論文への調整・適用
他の科目では過去問の活用により論文試験での「問われ方」と「答え方(書き方)」を対策したが、前述のように会計学では過去問を活用しないこととしたので、以下の書籍により対策を行った。また、複数の著者(出版社)の書籍を活用することにより、一言一句暗記しなければいけないワードと改変しても可能なワードの峻別を行うことができた。

 

「大原問題集」(2020.2~2020.3)
問題数は少ないが書き方と解説が丁寧。コラムも大変参考になった。(令和2年本試験で問われた「自己金融効果」もしっかり掲載されている。「減価償却費に見合う収益に相当する貨幣性資産の流入がなければ効果を得ることができない」というこの本の解説があればこそ、自己金融効果を理解することができた。)

「書き方」(2020.8)
問題の内容はオーバースペックなので活用せず。「難易度の判断水準」(p6)におけるその判断の理由付けが非常に秀逸であり、目からうろこであった。この1ページ(もっと言うと数行)で元が取れたといっても過言ではない。会計学と太刀筋が似ている鑑定理論にも応用可能な概念である。「合格答案を作成するために」(p8~p11)も参考になった。ワークブック編(会計基準の穴埋め)は4)で活躍した基幹教材のひとつとなった。

4)会計基準重要箇所の暗記
鑑定理論と同じく基準の暗記が肝である。もっとも範囲が膨大なので、絞る必要がある。そこで、書き方ワークブック編(会計基準の穴埋め)で空欄になっている箇所を中心に暗記を行った(2020.8~2020.10)。

5)直前期(2020.10)の対策
会計基準の暗記に特化。時間に余裕があれば論点集の復習。

 

6)簿記との兼ね合いについて
簿記の学習が会計学の理解に資することは疑いがない。そこで簿記試験の受験も検討したが、以下の理由により断念した。
・時間的理由
・簿記試験固有の論点(試算表 等)
・計算問題の煩わしさ

ちなみに令和2年本試験において200%定率法が出題され、これは簿記のテキストはおろか桜井入門書においても紹介されているくらいメジャーな論点であるにも関わらず解き方を思い出せず失点した。とても落胆したのだが、本試験講評動画を見ると失点しても問題ないという扱いだったので驚いた(TAC、LECともに)。少しでも簿記を齧っていると本試験でも有利に作用するということを実感した次第である。さらに、令和3年本試験の会計学の試験委員である橋本教授は簿記や会計の歴史的研究を行っているとのことなので、(参考:京都産業大学教員紹介)試験委員対策として簿記の比重を増やすという選択はあり得る。

 

7)対策範囲の制限
時間の制約上、過去問の出題分野を睨みつつ、自己の理解力も踏まえて範囲を制限した。具体的には、以下の会計基準については「切った」。もっともLECの直前出題予想に四半期財務が掲載されており試験当日慌てて重要語句だけ覚えた(幸い、出題されなかったが)。


退職給付に関する会計基準税効果会計に係る会計基準、企業結合に関する会計基準、事業分離等に関する会計基準、連結財務諸表に関する会計基準、四半期財務諸表に関する会計基準
→退職給付と税効果は過去問の傾向からみて出題されないだろうし、仮に出されても受験者総倒れだろうと踏んだ。
→その他については出題される可能性はなくはないが、時間対効果の観点からやむなくあきらめた。

 

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