不動産鑑定士試験の備忘録

結果として独学・兼業で臨むこととなった不動産鑑定士試験の備忘録

3.開示された解答/(2)経済学

令和2年不動産鑑定士試験(経済学)において以下のように解答し、93点を得た。
なお、問題2(1)については設問にミスがあったため全員正解となった。その影響もあってか、LECによると<経済学は70点だ80点だ乱発>することとなった。

1.雑感
・問題1(ミクロ経済学)について、セカンドプライスオークションなどという論点は見たことも聞いたこともなかったが、何も考えずに題意に従ってひたすら計算して、それを表にまとめるという作業を行った。「なぜ2位の価格を落札額とするのか」という問題が出なくてよかったと思う。

・問題1(2)②は表形式のレイアウトを考えるのに苦慮したが(利得「表」を作成しろという指示だったので)、予備校の解答だとシンプルな表+文章で大量に補足という形式だったので、そういう方法もあるのかと思った。
・問題2(マクロ経済学)については事前の予想通りの出題分野であったので気持ちが高ぶったが、(1)の地価水準と物価についての題意を深読みしすぎて大幅に時間をロスした(没問になるとは夢にも思わなかった)。
・当日の感触としては70点程度。没問があった分、大幅に上振れした。

 

2.解答
問題1
(1)
題意より需要関数D=10-2P…①式であり、供給関数S=1+P…②式である。
均衡時の取引量をQとし、①式②式に代入すると、

Q=10-2P…③式、Q=1+P…④式となり、③式と④式の連立方程式を解くことによりP=3 Q=4となる。ゆえに、均衡における戸建て住宅の価格は3(千万円)、取引量は4(千戸)となる。

(2)

落札者 

各買い手同額のため買い手1が1/2の確率で買い手2が1/2の確率で落札する。
落札額 

各買い手4千万円で同額のため、4千万円が落札額となる。
利得  

リスク中立的であることを踏まえ、期待利得により求める。
買い手1に関し、-1000万 買い手2に関し、0

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ナッシュ均衡とは相手が戦略を変えない限り、自己の戦略を変えるインセンティブが働かない状態のことである。


買い手2の戦略は「4,000万円で入札」以外にあり得ない。
買い手1も完備情報により、「4,000万円で入札」戦略を採用した場合の利得はー1,000万円であり「2,000万円で入札」戦略だと利得は0であり、後者の利得が前者の利得を上回るため、「2,000万円で入札」戦略を採用し、それがナッシュ均衡となる。


一般に、入札によっても交渉によっても最適な資源配分が実現し得る(但し、情報の完全性等の要件が備わっていることが前提)が、異なるのはそのコストであり、入札は各人が交渉により最適資源配分を目指すのと比較して交渉コストがかからない分、合理的である。

 

問題2
(1)

物価水準一定のため期待インフレ率は0とすると名目利子率と実質利子率は等しくなり名目利子率の低下は地価の上昇効果をもたらす。なお、図1地価の下落期においてはR(地代)の低下による地価下落効果が名目利子率低下による地価上昇効果を上回っていたものと考えられ、地価上昇期においてはR(地代)も上昇し、それによる地価上昇効果と名目利子率下落による地価上昇効果により、地価が上昇したものと考えられる。

 

(2)

貨幣は、価値保存、価値尺度、交換仲介の機能を持ち、その持つ機能(流動性)ゆえに人々に需要される。
ケインズは、流動性選好理論に基づき、貨幣需要を決定する要因として、①取引的動機②予備的動機③投機的動機を挙げた。これに基づけば、①、②は取引に付随して需要されるため、国民所得(Y)に比例する。③は資産選択の結果としての需要要因であり、貨幣と債券の選択による。

債券価格は名目利子率(r)と反比例し、債権価格が上昇すれば貨幣需要は増加する。すなわち貨幣需要国民所得に比例し、名目利子率に反比例する。したがって、名目利子率が低下すれば貨幣需要は増加する。なお、名目利子率が極端に低い場合においては人々は債券価格の下落を予想するため、貨幣需要の利子弾力性は無限に近似していく。この関係を図示すれば下記の通りである。

(図)※後日画像形式で保管予定。

 

(3)①貨幣の流通速度 物価水準(財の価格) 実質 名目 長期

(4)

日本銀行の「量的・質的金融緩和」は貨幣供給量を増加させることにより、ファンダメンタルズの割引率に対して低下させる作用を持つ、その波及経路は以下の3点である。
①貨幣供給量増加による名目利子率低下
貨幣市場の均衡式M/P=L(Y,r)により、また、本問(2)の解答のとおり、貨幣供給量Mの増加は名目利子率の低下をもたらす。これは割引率の低下に作用する。
②金融緩和政策による国民所得の増加によるリスクプレミアムの低下
金融緩和政策により国民所得が増加し、リスクプレミアムが低下することにより、割引率が低下する。
③金融緩和政策によるインフレ期待が生まれることにより、実質利子率が低下することは割引率の低下に作用する。

 

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