不動産鑑定士試験の備忘録

結果として独学・兼業で臨むこととなった不動産鑑定士試験の備忘録

保管目録

はじめに(趣旨説明)

1.結果概要

2.試験日程の変遷

3.開示された解答
(1)民法<59点>
(2)経済学<93点>
(3)会計学<65点>
(4)鑑定理論<135点>
(5)鑑定理論(演習)<49点>

4.試験当日のTIPS

5.参考書籍

6.参考サイト及び動画

7.参考書籍等の具体的な活用内容

(1)基本方針
(2)鑑定理論
(3)行政法
(4)民法
(5)経済学
(6)会計学

 

6.参考サイト及び動画

不動産鑑定試験の対策をするに当たって参考にしたサイトです(ありがとうございました)。他にもいろいろなサイトを参考としましたがURLがわからず記載できていない場合があるので、検索で辿り着く等できれば随時更新していきます。

 

不動産鑑定士の勉強法

<このHPは、普通の社会人が仕事をしながら独学(予備校等の講座・模試の利用なし、市販の書籍のみ)で、短答合格、論文合格した経験を振り返り、効率的な学習方法や気をつけるポイントなどを記録をしたものです。>という趣旨説明のとおり、独学における基本的な方針を示したサイト。
・このサイトの存在が精神的支柱になった。
・参考文献は絶版になっているものが多いが、基本的な方針は現在も十分活用できる内容。
・試験対策方針に迷いが生じた時は、このサイトに立ち返って検討を行った。
※現在閲覧できなくなっています。

 

鑑定士パーク

・LEC鑑定士講座の公式ブログ。
・模試で出た論点や受験者のウィークポイントを知ることができる。
・また、LEC講師が「出ない」と思っている論点を知ることができる。
・たとえば会計学における税効果会計。「税効果会計は定義程度を知っておけばよい」旨の記事が掲載されており、そのおかげで自信を持って対策外とすることができた。


LEC不動産鑑定士【公式】@LEC_kanteishi

・LEC鑑定士講座の公式twitter
・試験に係る一般の情報を収集できる。
・コロナ禍のため試験日程が変遷したこと等の情報を知るために重宝した。


不動産鑑定士クエスト

・特に「不動産鑑定士試験の合格答案の書き方を考えてみる(鑑定理論)」は、必見。論文作成のノウハウがコンパクトに凝縮されている。

 

不動産鑑定士のブログ~坂の上の雲~
・特に「論文式試験の答案構成はどうやったらいいのか?」が、大変参考になった。

 

予備試験を独学・1年で受験してみた

・メタ学習部分の記述が大変参考になった。

 

【LEC不動産鑑定士】不動産鑑定士の会計学ってこんなもの 高坂賢一 専任講師

会計学の対策に当たって、基本方針となった動画。(昔は学説も問われたが現在は基準を覚えていれば合格点がとれる等)
・また、会計学のみならず、鑑定士試験全体を俯瞰的・横断的に分析した大変参考となる動画。

 

【LEC不動産鑑定士】2021鑑定理論・論文ブリッジ講座(第1回前半) 川原正幸 講師】

・35:31~は必見。本旨は暗記の必要性であるが、試験委員の採点基準(予備校との採点基準の違い)を考察するうえで示唆に富む内容となっている。

 

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7.参考書籍等の具体的な活用方法/(3)会計学

令和2年不動産鑑定士試験(会計学)において以下のように解答し、65点を得た。

 

1.雑感
・手ごたえはなかった。
・時間が余った(1時間以上)。
・200%定率法は簿記における基本的な問題であるにもかかわらず失点。これが精神的にかなり響いたのだが予備校の解答速報などを見ると合否に影響なしとのこと。
・当日の感触としては40点~60点程度。

 

2.解答
問題1
(1)
(ア)有形的 (イ)耐用期間 (ウ)配分 (エ)償却資産 (オ)非償却資産
(カ)減耗性資産 (キ)生産高比例法

 

(2)
減価償却費は貨幣性資産の流出を伴わない費用であるため、減価償却費の分が、償却資産の取替費用として企業内部に留保されることとなる。これを減価償却の自己金融効果という。以下、簡単な数値例を用いて説明する。

今、貨幣性資産たとえば現金の流入が収益として100円あったとする。簡明化
のため、減価償却費以外の費用はなきものとする。
ここで、減価償却費が0円であったとすると、収益が100円 費用が0円であり、
利益が100円となり、分配等されることとなる。
しかし、減価償却費が10円であったとすると、収益が100円 費用が10円であり、利益は90円となり、ここから分配等されることとなり、10円は非償却資産の取替費用として内部に留保されることとなるのである。

 

問題2
(1)
(ア)使用 (イ)解除 (ウ)経済的利益 (エ)実質的 (オ)コスト
(カ)売買取引 (キ)賃貸借取引

 

(2)
a 契約上は中途解約可能でも、多額の違約金が発生する等、実質的には中途解約が
  不可能なリース取引。

b リース物件を使用・収益することにより、リース物件により獲得されるキャッシュ・フローを投資の成果とすることができること。

c リース物件を自己所有するとすれば負担するであろうコストを負担すること。

 

(3)
リース資産は、リース物件を使用収益することにより得られるキャッシュ・フロー
割引現在価値とし、リース債務はリース料総額とする。

 

(4)
所有権移転ファイナンス・リース取引については、自己所有の固定資産と同一の方法で
減価償却を行い、所有権移転外ファイナンス・リース取引についてはリース期間を耐用
期間とし、残額を0として減価償却を行う。

 

(5)
所有権移転ファイナンス・リース取引、所有権移転外ファイナンス・リース取引、オペレーティング・リース取引のいずれについても財産使用権の移転を伴うものであるため、いずれもリース資産を貸借対照表に計上すべきものである。

 

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3.開示された解答/(4)鑑定理論

令和2年不動産鑑定士試験(鑑定理論)において以下のように解答し、135点を得た。


1.雑感
・未暗記箇所(6章留意とか)から出題されなくて安堵したのが第一印象。
・答案構成は「上位概念→定義→問題文の直接的な解答」パターンのみで対処(それしか知らない)。
・当日の感触としては120~140点前後。
・暗記したものを上記パターンに基づき貼り付ければ7割程度の点はつけてくれるが、
+αを狙うには次元の違う対策が必要になると感じた。

 

2.解答

問題1
(1)
鑑定評価を行うに当たっては、基本的事項として対象不動産、価格時点、価格・賃料の種類を確定する必要がある。そのなかでも、まず、対象不動産を確定する必要がある。対象不動産の確定に当たっては、鑑定評価の対象となる土地・建物等の物的事項を確定することのみならず鑑定評価の対象となる所有権等の権利の態様に関する事項を確定させる必要があり、これは、鑑定評価の対象となる不動産を他の不動産と明確に区別し、特定する作業である。対象不動産の確定は不動産鑑定士が、依頼目的及び鑑定評価の条件に照応した対象不動産と当該不動産の現実の利用状況を照合し、確認するという実践行為を経て最終的に確定される。ここに鑑定評価の条件設定の必要性が認められる。
特に不動産はその範囲が可変的であり、外見上不分明な債権をも鑑定評価を対象となることがあり、複数の権利が同一不動産の上に併立することもあるため、対象不動産を確定させるために必要な条件(対象確定条件)が必要となる。また、現実の用途、権利の態様、対象不動産に係る価格形成要因のうち地域要因及び個別的要因を所与とするのみでは多様な不動産取引の実態に即応できず、社会的な需要に応ずることができないため、現実の対象不動産の利用状況と異なる対象確定条件、対象不動産の地域要因及び個別的要因に係る想定上の条件、調査範囲等条件(不動産鑑定士の通常の調査の範囲では事実の確認が困難な特定の価格形成要因が存する場合に、当該要因の調査の範囲に係る条件)を設定することがある。条件設定は不動産の鑑定評価の妥当する範囲を示すとともに、不動産鑑定士の責任の範囲を示すためにも必要となるものである。

 

(2)
条件設定に当たっては、依頼者と、鑑定評価依頼契約上の合意が必要となる。
妥当ではない条件のときは依頼者に説明の上、妥当な条件に改定すべきであり、これが受け入れられず公正妥当な鑑定評価が不可能と判断される場合は依頼を謝絶すべきである。また、依頼内容と鑑定評価の条件は関連しており、不動産鑑定士は不動産鑑定業者の受付を通じて間接的に依頼内容を知ることとなるが、同一不動産であっても条件設定の如何によっては異なる鑑定評価額となることもあるので、依頼者に直接依頼内容を確認すべきである。

 

(3)
①対象確定条件の設定に当たっては、対象不動産について価格時点と異なる権利の態様を前提として鑑定評価を行うことがある。対象確定条件の設定に当たっては対象不動産の諸事項を調査・確認の上、当該条件設定が鑑定評価書の利用者(依頼者、提出的等のほか当該鑑定評価を踏まえ販売される不動産の購入者等含め)の利益を害するおそれがないかどうかの観点から妥当性を確定しなければならない。すなわち、鑑定評価書の利用者が、現実の利用状況との相違(本件のおいては、付着している使用収益を制約する権利をないものとしていること。)が、対象不動産の価格形成への影響の程度を自ら判断できるかどうかという観点から妥当性を行う必要がある。

②鑑定評価報告書には鑑定評価の条件を記載する必要があり、現実の利用状況と異なる対象確定条件を設定した場合はそれが妥当であると判断した理由及び必要と認められる場合には、現実の利用状況を所与として(本件においては使用収益を制約する権利が付着しているものとした)鑑定評価額を参考事項として記載する。

 

問題2
(1)原価法は、鑑定評価によって価格を求める手法にひとつであり、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価に減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を積算価格という)。減価修正の目的は、減価の要因に基づいて発生した減価額を、対象不動産の再調達原価から控除することにより価格時点における対象不動産の適正な積算価格を求めることにある。減価の要因は物理的要因、機能的要因、経済的要因に分けられ、これらは独立しているものではなく相互に関連し影響を与え合いながら作用している。減価額を求める方法には①耐用年数に基づく方法及び②観察減価法の二つの方法があり、これらを併用するものとする。

①耐用年数に基づく方法は、対象不動産の価格時点における経過年数及び経済的残存耐用年数の和として把握される耐用年数を基礎として減価学を把握する方法である。経済的残存態様年数とは、価格時点における対象不動産の物理的要因及び機能的要因に照らした劣化の程度並びに経済的要因に照らした市場性の程度に応じて、対象不動産の効用が十分に持続すると考えられる期間のことをいい、この方法の適用にあたり特に重視すべきものである。なお、減価額の把握にあたって、定額法、定率法等があるがいずれを用いるかは用途・利用状況に即して決定すべきである。耐用年数に基づく方法は、外部観察では見落としやすい要因(不可視部分の鉄骨の腐触等)を減価額に反映させることが出来るが、不動産の減価は規則的に発生するものではなく個別性を反映しにくいという短所もある。


②観察減価法は価格時点における対象不動産について維持管理の状態、補修の状況、付近の環境との適合の状態等、各減価の要因の実態を調査し、減価額を直接求める方法である。この場合、対象不動産に係る個別分析に基づき把握した対象不動産と代替・競争等の関係にある不動産と比べた優劣、競争力の程度等を適切に反映すべきである。観察減価法は個別的な減価を反映することが出来るが、外部観察では見落としやすい要因を反映させにくいという短所がある。

 

(2)
①増築時、耐用年数に基づく方法適用上の留意点

増築による設備の更新により、機能的要因による減価額への影響に留意する必要がある。また、増築による市場性の回復、付近の不動産との適合の状態が改善されることにより、経済的要因による減価額への影響に留意する必要がある。これらは、経済的残存耐用年数を伸長させ、もって耐用年数の伸長に資することがあるからである。また、この方法の適用に当たって、分別可能な二つ以上の組成部分により構成されている場合、それぞれ経過年数や経済的残存態様年数をいかに判断して用いるか、その耐用年数満了時に残材価格をいかにみるかは用途や利用状況に即して決せられるべきであるが、増築時はまさにこれらの点に留意する必要がある。すなわち、増築部分と既存部分とにおいて経過年数が異なるのは必然であり、増築部分の構造、材質にもよるが、その経済的残存耐用年数も異なる可能性が高いからである。

 

②増築時、観察減価法適用上の留意点
増築による個別的要因の変化により、対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比較した場合の市場性の競争力の程度等に影響を与えることがあり、これに留意すべきである。また、増築により、不可視部分が増える場合は、減価の要因の実態を調査する際に見落とさないように留意する必要がある。

 

問題3
(1)収益還元法は、不動産の価格を求める鑑定評価の手法のひとつであり、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格(鑑定評価の手法の適用によって求められた価格のこと)を求める手法である。(この手法により求められた試算価格を収益価格という。)貸家及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者が同一人であるが、建物が賃貸借されている場合における当該建物及びその敷地をいう。貸家及びその敷地の鑑定評価額は実際実質賃料(売主が既に受領した一時金のうち売買等に当たって買主に承継されない部分があるときは、当該部分の運用益及び償却額を含まないものとする)に基づく純収益等から求めることにより得た収益価格を標準とし、原価法により求めた試算価格(積算価格)及び取引事例比較法により求めた試算価格(比準価格)を比較考量することにより決定するものとする。また、収益還元法には、対象不動産の一期間の純収益を還元利回りで還元して収益価格を求める方法(直接還元法)と、連続する複数の期間に発生する純収益と復帰価格(保有期間又は分析期間満了時の対象不動産の価格)について、各発生時期に応じて現在価値に割り引きそれぞれを合計する方法(DCF法)がある。

 

(2)①土地残余法とは収益還元法のひとつであり、対象不動産が更地である場合に、当該更地に最有効使用の賃貸用建物の建築を想定し、当該想定建物の価格が収益還元法以外の方法によって求めることができるとき、当該想定建物及びその敷地が生み出す純収益から当該想定建物の生み出す純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元することにより敷地の収益価格を求める手法である。また、この手法は対象不動産が敷地と建物等の結合によって構成されている場合、当該建物等の価格が収益還元法以外の方法によって求めることができるとき、適用することができる。ただし、建物等が古い場合には、複合不動産から生み出す純収益から、敷地に帰属する部分を適切に配分することができないので、建物等は新築か築後間もないものであることに留意する必要がある。また、賃貸用不動産のライフサイクルの観点(更地に賃貸用建物の建築を想定し、建物の耐用年数満了後解体し、次の建物を建築するというサイクル)を踏まえ複合不動産が生み出す純収益を査定すべきことに留意する必要がある。土地残余法は、複合不動産が生み出す純収益を、建物及びその敷地に適切に配分することができる時に有効である。

 

②両者では還元利回りの適用段階に違いがある。すなわち、直接還元法は、純収益は、収益価格を求めるために還元利回りで還元される対象として把握される。この純収益は、建物と敷地の結合を前提とする。これに対し、土地残余法における純収益は、還元対象となる純収益は、敷地部分に帰属する純収益であるし、仮に題意の「純収益」が複合不動産における純収益を指すものだったとしても、建物と敷地それぞれの配分段階が異なれば、純収益の変動予測及び予測に伴う不確実性の反映の仕方が異なる。したがって、還元利回りは、収益価格を求める方法とも密接な関連があるためその把握の仕方において整合がとれたものでなければならない。

 

問題4
(1)証券化対象不動産とは、以下の不動産取引の目的となる不動産又は不動産取引の目的となる見込みの不動産という。
1.資産流動化法に規定する資産流動化に係る不動産取引
2.投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資法人が行う不動産取引及び同法に規定する投資信託に係る不動産取引
3.不動産特定共同事業法に規定する不動産特定共同事業に係る不動産取引
4.金融商品取引法に規定する有価証券及び有価証券とみなされる権利(信託受益権)の債務の履行を主たる目的として収益・利益を得ることを目的とした不動産取引証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価は不動産鑑定評価基準各論第3章の定めるところに従って行わなければならない。証券化対象不動産の鑑定評価に当たっては不動産鑑定士は、依頼者のみならず広範な投資家等に重大な影響を与えることを考慮するとともに、不動産の鑑定評価制度に対する重要な責任を有していることを考慮するとともに、不動産の鑑定評価制度に対する重要な責任を有していることを認識し、不動産の証券化が円滑かつ適切に行われるよう、証券化対象不動産の鑑定評価の手順に最大限配慮すべきである。また、鑑定評価書については、依頼者等がその内容を容易に把握、比較することができるよう、記載方法を工夫し、その鑑定評価において採用した資料を明示する等、説明責任が十分果たされるものでなければならない。また、証券化対象不動産の鑑定評価に当たって適用するDCF法において使用する純収益を求めるために必要となる費用収益項目について、依頼者にその項目、定義を説明の上、資料の協力を求めるべきである。このように、証券化対象不動産の鑑定評価に当たっては、依頼者にその手順や資料等について説明し、理解を深め、協力を得る必要がある。そして、DCF法の適用において、最終還元利回りや割引率、収益費用の変動予測等査定した個々の項目を経済情勢の変動の可能性も含めて論理的、実証的に説明することが必要である。またDCF法による収益価格(直接還元法による検証含む)と取引事例比較法によって求めた試算価格及び原価法によって求めた試算価格との関連についても鑑定評価書を通じて、説明する。


(2)
処理計画の策定に当たっては、あらかじめ、以下の事項を確認し、処理計画に反映させるとともに、確認事項に変更があった場合は、処理計画も変更する。
1.鑑定評価の依頼目的、条件、鑑定評価が必要となった背景
2.鑑定評価が不動産鑑定評価基準各論第3章第1節の定義のいずれに該当するものであるか。
3.エンジニアリング・レポート(建築物、設備等及び環境について専門的知識を存する者が作成した調査報告書)及びDCF法の適用に必要な資料その他必要な資料の入手時期・項目
4.内覧の実施も含めた実地調査の範囲
5.その他必要な事項

 

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3.開示された解答/(2)経済学

令和2年不動産鑑定士試験(経済学)において以下のように解答し、93点を得た。
なお、問題2(1)については設問にミスがあったため全員正解となった。その影響もあってか、LECによると<経済学は70点だ80点だ乱発>することとなった。

1.雑感
・問題1(ミクロ経済学)について、セカンドプライスオークションなどという論点は見たことも聞いたこともなかったが、何も考えずに題意に従ってひたすら計算して、それを表にまとめるという作業を行った。「なぜ2位の価格を落札額とするのか」という問題が出なくてよかったと思う。

・問題1(2)②は表形式のレイアウトを考えるのに苦慮したが(利得「表」を作成しろという指示だったので)、予備校の解答だとシンプルな表+文章で大量に補足という形式だったので、そういう方法もあるのかと思った。
・問題2(マクロ経済学)については事前の予想通りの出題分野であったので気持ちが高ぶったが、(1)の地価水準と物価についての題意を深読みしすぎて大幅に時間をロスした(没問になるとは夢にも思わなかった)。
・当日の感触としては70点程度。没問があった分、大幅に上振れした。

 

2.解答
問題1
(1)
題意より需要関数D=10-2P…①式であり、供給関数S=1+P…②式である。
均衡時の取引量をQとし、①式②式に代入すると、

Q=10-2P…③式、Q=1+P…④式となり、③式と④式の連立方程式を解くことによりP=3 Q=4となる。ゆえに、均衡における戸建て住宅の価格は3(千万円)、取引量は4(千戸)となる。

(2)

落札者 

各買い手同額のため買い手1が1/2の確率で買い手2が1/2の確率で落札する。
落札額 

各買い手4千万円で同額のため、4千万円が落札額となる。
利得  

リスク中立的であることを踏まえ、期待利得により求める。
買い手1に関し、-1000万 買い手2に関し、0

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ナッシュ均衡とは相手が戦略を変えない限り、自己の戦略を変えるインセンティブが働かない状態のことである。


買い手2の戦略は「4,000万円で入札」以外にあり得ない。
買い手1も完備情報により、「4,000万円で入札」戦略を採用した場合の利得はー1,000万円であり「2,000万円で入札」戦略だと利得は0であり、後者の利得が前者の利得を上回るため、「2,000万円で入札」戦略を採用し、それがナッシュ均衡となる。


一般に、入札によっても交渉によっても最適な資源配分が実現し得る(但し、情報の完全性等の要件が備わっていることが前提)が、異なるのはそのコストであり、入札は各人が交渉により最適資源配分を目指すのと比較して交渉コストがかからない分、合理的である。

 

問題2
(1)

物価水準一定のため期待インフレ率は0とすると名目利子率と実質利子率は等しくなり名目利子率の低下は地価の上昇効果をもたらす。なお、図1地価の下落期においてはR(地代)の低下による地価下落効果が名目利子率低下による地価上昇効果を上回っていたものと考えられ、地価上昇期においてはR(地代)も上昇し、それによる地価上昇効果と名目利子率下落による地価上昇効果により、地価が上昇したものと考えられる。

 

(2)

貨幣は、価値保存、価値尺度、交換仲介の機能を持ち、その持つ機能(流動性)ゆえに人々に需要される。
ケインズは、流動性選好理論に基づき、貨幣需要を決定する要因として、①取引的動機②予備的動機③投機的動機を挙げた。これに基づけば、①、②は取引に付随して需要されるため、国民所得(Y)に比例する。③は資産選択の結果としての需要要因であり、貨幣と債券の選択による。

債券価格は名目利子率(r)と反比例し、債権価格が上昇すれば貨幣需要は増加する。すなわち貨幣需要国民所得に比例し、名目利子率に反比例する。したがって、名目利子率が低下すれば貨幣需要は増加する。なお、名目利子率が極端に低い場合においては人々は債券価格の下落を予想するため、貨幣需要の利子弾力性は無限に近似していく。この関係を図示すれば下記の通りである。

(図)※後日画像形式で保管予定。

 

(3)①貨幣の流通速度 物価水準(財の価格) 実質 名目 長期

(4)

日本銀行の「量的・質的金融緩和」は貨幣供給量を増加させることにより、ファンダメンタルズの割引率に対して低下させる作用を持つ、その波及経路は以下の3点である。
①貨幣供給量増加による名目利子率低下
貨幣市場の均衡式M/P=L(Y,r)により、また、本問(2)の解答のとおり、貨幣供給量Mの増加は名目利子率の低下をもたらす。これは割引率の低下に作用する。
②金融緩和政策による国民所得の増加によるリスクプレミアムの低下
金融緩和政策により国民所得が増加し、リスクプレミアムが低下することにより、割引率が低下する。
③金融緩和政策によるインフレ期待が生まれることにより、実質利子率が低下することは割引率の低下に作用する。

 

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3.開示された解答/(1)民法

令和2年不動産鑑定士試験(民法)において以下のように解答し、59点を得た。


1.雑感
・気が動転して条文引用の際に「第」をつけてしまった。間違いではないが時間のロス。模試を受けていない弊害。

・ナンバリングをする余裕もなし。
・問題1(1)代理人が未成年だから取消可とする大きなミス。表見代理について論じはしたものの全体の理解を誤っているから、数点しか乗っていないのではないか。
・問題2(2)債務不履行による合意解除は転借人に対抗できるかという論点落とし。予備校の分析によると合否に影響ない論点とのことだったが……。
・当日の感触としては50点程度。実際の得点は多少上振れしている。論証の暗記があやしくても正解筋で書いた箇所は7割程度の点をつけてくれている印象。

 

2.解答
問題1
(1)について
AがCに対して甲不動産の所有権移転登記の抹消登記手続を請求できるためには、甲不動産の所有権がAに帰属している必要があり、Aは、AC間の売買契約が無効であると主張することが考えられる。
たしかに、BがAから代理権を与えているのは甲不動産の修繕等のために必要な範囲であるから甲不動産の処分について、未成年であるB(第4条)は、法定代理人Aの同意を得る必要(第5条第1項)があり、それに反する法律行為は取り消すことができ(第5条第2項)、取り消した法律行為は遡及的に無効となる(第121条)。
もっとも、Cは表見代理(第110条)が成立し、当該契約は取り消すことができない(第5条第3項)と主張することが考えられる。
表見代理成立のためには基本代理権の存在が必要となるが、その代理権は私法上の法律行為についての代理である必要がある。
本件では、BはAより、甲不動産の修繕等についての代理権を付与されており要件を充足する。

また、表見代理成立のためには、「正当な理由」が必要であるところ、これは代理権が存していることの正当な信頼すなわち代理権の存否について善意・無過失であることと解する。
本件では、Cは未成年であるBに対し、甲不動産処分に関する代理権の有無につき
確認をしておらず過失が認められる。
ゆえに要件を充足しない。
したがって、Cは表見代理の成立を主張できない。
以上より、Aは、甲不動産の売買契約を取り消し、かつその所有権移転登記の抹消登記手続をCに請求することができる。

(2)について
AがEに対して乙の引き渡しを請求できるためには、乙の所有権をEに主張できる
必要がある。
乙は、BをAの代理人として、AD間で売買されているものの、DはBに対して
欺罔行為をはたらき、Bは地価が下落すると誤信して適正な地下よりも廉価で売買
しているため、Aは当該売買契約を取り消すことができる(第96条第1項、第101条第1項)。
もっとも、乙は善意のEに転売されており、当該売買契約をAはEに対抗することができるか、Eが「第三者」(第96条第3項)にあたるか否かが問題となる。
「第三者」は、取り消された法律行為に基づき新たに独立した法律関係を有するに至った前、すなわち取消前の第三者と解する。なぜなら、第96条第3項の趣旨は取消の遡及効(第121条)から第三者を保護する規定であるからである。
また、主観的保護要件については、無過失であることは不要と解する。なぜなら、だまされた者にも落ち度があるし、条文上も「善意」のみが要求されているからである。
したがって、Aは、AD間の売買契約の取り消しをEに対抗できず、所有権の主張もできない。
以上より、Aは、Eに対して乙の引き渡しを請求できない。

 

問題2
(1)について
AB間において、賃貸借契約が終了している以上、その目的物である甲建物をBは所有者であるAに明け渡す必要があるところ、Bは建物明渡しと敷金返還請求権が同時履行の関係(第533条)にあるとして、敷金返還なき限り甲建物を明け渡さないと主張しているものと考えられる。
賃貸借契約の目的物である建物の明け渡しと敷金返還請求権が同時履行の関係にたつか、敷金返還請求権の発生時期が問題となる。
敷金は、賃貸借契約の目的物について、建物の明け渡しまでについて生じたすべての賃借人に対する債権を担保するものであるから、敷金返還請求権の発生時期は建物明け渡し後であると解する。
したがって、建物明渡しと敷金返還請求権は同時履行の関係になく、Bは敷金返還なき限り甲建物を明け渡さないとの主張をすることができない。
以上より、AはBに対して、所有権に基づき敷金を返還することなく甲建物の明渡しをBに請求することができる。

(2)について
Aが所有権に基づきCに対して甲建物の明渡しを請求できるためには、AB間の甲建物の賃貸借契約の合意解除をCに対抗できる必要があるも否定的に解する。なぜなら合意解除は一種の権利の放棄であると考えられるところ自己のある権利について他人がその権利の上に正当な権利を有している場合、それを侵害することは信義則(第1条第2項)に反し、許されないからである。
そして、法律関係の簡明化のため、賃貸人Bの地位にCが入り、AC間において
賃貸借関係が発生する。
したがって、AはCに対して甲建物の明渡しを請求できない。

 

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はじめに(趣旨説明)

不動産鑑定士試験を受けるにあたって使用した教材等を自身の備忘録として作成しています。また、同じく独学で試験に臨まれる方の参考になればと思い、公開しています。

 

なお、私の対策方法は「不動産鑑定士の勉強法」から影響を受けてというか、ほとんど真似をしたような感じです。ですので、メソッドとして独学での対策方法をお知りになりたい方は、「不動産鑑定士の勉強法」をご覧になることをおすすめします(が、閲覧できなくなっています(2021.5.27時点))。

 

なお、結果として予備校の講座は活用せず、また模試(答練)も受けませんでしたが、それらは諸事情によるものであり、これを推奨するものではありません。

 

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