不動産鑑定士試験の備忘録

結果として独学・兼業で臨むこととなった不動産鑑定士試験の備忘録

7.参考書籍等の具体的な活用方法/(4)民法

宅建合格程度の前提知識はあったが非法学部であり論文を課される試験を受けたこともなかったので、まず法律系の論文では何を書くものなのかという「作法」の確認を行うところから始める必要があった。


1)作法の確認
民法の論文では何を書くべきかという下調査を行った。その際、鑑定士試験の民法に限定すると情報が極めて少ないので、司法試験や予備試験ではどうするのかという観点で行った(鑑定士試験も結局は法学部の教授が作成するであるから、作問や採点に当たっては司法試験や予備試験を意識するだろうという見立て)。


その結果、「法的三段論法」が重要であり、論証や論点パターンを暗記することが
技法のひとつである(近時の司法試験では論パ貼り付けは金太郎飴答案と揶揄され受けが良くない)ということがなんとなくの最大公約数であると認識した。ちなみに、「思うに」という表現もトレンドとして敬遠されているらしい。採点実感で、一般に使われていない用語だからとのコメントがあったからとのこと。司法試験界における「採点実感」の影響力を目の当たりにした次第だ。
(参考)平成22年新司法試験の採点実感等に関する意見法務省HP・PDF)

 

以上をネットで収集した上で、石橋先生の「論文答案Q&A50」で方向性を整理した。特に「4段階思考」は非常に有用であった。「法的三段論法」が答案の一部にしか対応していないのに対して、石橋先生の「4段階思考」は答案の全体に対応できる概念である点、優れている。

※「4段階思考」については、著者が動画にしており、無料で視聴することができる(書籍よりこちらの方が詳細かつわかりやすい)。

 

2)入門書の活用
当初、火力不足を承知で宅建のテキストを復習していたが(2019.10~12)、火力不足どころか撃ってる方向が違うような気がした(条文番号の引用がないとか解釈論(規範定立)部分が薄いとか)。そこで3)と並行して、伊藤塾ファーストトラック(2020.1~3)を活用(通読)することとした。

これはテキストと入門書の中間くらいの本で、本当に重要な点しか掲載されていないが、体系を把握することができる。これによって、仕入れた知識を整理しやすくなった。

 

3)論文を書くための基本知識習得
他の科目と異なって、論文を書くための知識の習得を論文を書くための対策と同時に行った。対策には「伊藤塾予備試験赤本」(2020.1~4)を活用した(※民法改正注意)。

 

これは、1つの問題に対して模範答案と優秀答案(講師の採点コメント付き)が掲載されている点が良かった。また、答案に必要な要素を分解して、模範答案がその要素のいずれに対応しているのかという点に関してコメントが付されている点も有用であった。
占有改定等、鑑定士試験で出題可能性が低い箇所は省いた(動産は出ないだろうという見立て)。また、予備試験の過去問部分も省いた(事実関係が長すぎる)。基本問題部分のみ反復学習を行った。

 

なお、本当は評判の良かった基本論点問題集を入手したかったが、法改正前年だというのに時価が定価の約5倍というおそろしいプレミアムがついており断念した。改正後の今でも時価が定価の約1.5倍程度であるから、驚く。

 

予備試験赤本では問題数が足りないので、書き方の型を学んだ後はTAC過去問(2020.6~9)を回した。

判例ベースで書かれていない箇所があるので、留意が必要(記述のしやすさを考慮してのことであろうと思われるが)。解答案の作成に当たっては、過去問の解答例を参考にしつつも、4段階思考を常に意識し、予備試験赤本の枠でとらえるとどのような解答になるかという観点を重視した。その際、予備試験赤本に掲載されていない問題についてはスタン100を辞書的に活用した(言い回しで悩んだ時など)。スタン100を通読したくなる誘惑に駆られつつもそれは時間対効果の悪い行為であるから思いとどまった。また、直前期の復習用に繰り返し問われた問題の概要と答案構成と論証部分をA5用紙にメモっておいた(手製の「こう書け」のようなもの)。

 

また、論証集(※)も少し活用した(2020.9~10)が、問題(事例)とセットでないと全く頭に入ってこない。したがって、過去問や伊藤塾予備試験赤本で活用されている論証にマーカーを引いて、その部分を重点的におさえ、頻出論証については復習メモに集約した。その際、できるだけコンパクトな論証かつ流れの良い論証になるように適宜短文化した。短文化に当たっては、スタン100を参考にした。

工藤北斗の論証集を活用したが、民法改正に伴い改題された。


4)直前期
過去問で問われた論証の暗記。3)で過去問で繰り返し問われた問題と答案構成をメモっておいて、その復習(手製の「こう書け」のようなもの)を繰り返し行った。

 

5)【参考】改正民法対応
本試験の手ごたえが全くなく、8割方不合格だと思っていたので改正民法対策を行った。まず、改正民法に関する解説書を読むこととした。

ただ、この解説書ではカバーできていない範囲(詐害行為取消権とか)があるのは確実だったので、問題演習と並行して知識を吸収していく予定であった。

 

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